5/9「誰も気づかなかった」

本があった。しかしそれが本だと、ここにいる誰も、気づかなかった。本は読まれなかったからである。

長田弘『誰も気づかなかった』みすず書房 p.14

 

    去年発売された本でいちばんくりかえし読んでるのが『誰も気づかなかった』である。100ページもないし、文字が大きく1ページの分量がとても少ないからすぐに読み終わるというのもあるが、これほど読みやすくむずかしいことはほとんど書かれていないのに、哲学的で考えさせられる文章もなかなかないのではないか。長田弘の文章は教訓めいているところがあって、ふつうここまで言い切られると鼻につくところなのだが、そこを越えてしまうかっこよさがあるのは、この短詩のような形で断章形式で連ねた書き方もかなり貢献しているように思われる。句読点の打ち方は完璧でとにかく美しい。孤独、真実、幸福、といった正直ありきたりといっていい言葉を使用しながら、こんなに新鮮な文章を書けるのは長田弘が優れた詩人だったからといったらそれまでなのだが、ちょっと他に見当たらないというくらいこの本は最高で、何度読んでも感動がある。

    今日は絵を描くつもりだったのだけど、いろいろやっているうちに時間がなくなりキャンバスを買ってくるだけで終わってしまった。文学フリマの店番のスケジュールが決まったので、そのうち発表するつもり。一週間後に文学フリマがあると思うと不思議な気がする。みんなそうだと思うけれど、人が集まるところに行ってないから。人はほんとうに来るのだろうか?