8/10「感銘」

    どこで読んだのか探してみたけれど見つからない。アメリカの詩人・哲学者エマーソンのことばだと思う。いたく感激したのだけれども正確には覚えていない。大意だけ言うと、「自分が心を動かされた本と同じようなやり方で、自分の本も読まれたい」といった内容だ。

    言われてみれば、こうして原稿を書いているとき、おそらく自分も、(僭越とは承知のうえ、それでも)遠い昔になにかを読んで感銘を受けたときの感覚をもって人に読まれたいと思っているような気がしなくもない。逆に言うと、なんらかの表現を通して、人になにかを伝えようとするとき、誰もが過去に自分の心が動いたときの感覚をなぞりながら、なんとかそれを自分の手でほかのひとにもたらすことができないかと四苦八苦しているのだということを、このことばは教えてくれているように思う。

若林恵『さよなら未来』岩波書店p.91~p.92

 

〈……感銘を受けたときの感覚を持って人に読まれたいと思っているような気がしなくもない。〉という言葉を目にした時に、そういえばわたしが日記を書きはじめたのはそもそも『読書の日記』に感銘を受けたからで、作者の阿久津隆の日々楽しく読書するさまに心をうたれて、とにかく自分ももっと楽しく読書ができるはずだと明らかに読書に対する姿勢が変わったあの瞬間を思い出したのだ。それと同様に『さよなら未来』からにもやはり感銘を受けている。いまむしょうに文章が書きたくなっているし、本が作りたくなっている。いまこの『さよなら未来』を読んでいる時間は今後に繋がってくるという予感がはっきりとある。心が動かされているのがわかる。詳細をことばにするのはむずかしい。というか、ことばにする必要がない。ゆるやかに感じ取ったまま、それを自分のやり方で出力すればそれがことばになり、文章になり、作品になる。本当に自分とフィットする良いものと出逢うと迷いがなくなる。とても良い状態だ。

    今朝は第4回阿波しらさぎ文学賞の受賞作の発表があった。受賞者は昨年のブンゲイファイトクラブ2の予選のGグループで一緒で対戦したこともある、なかむらあゆみさんだった。最終候補作の発表時には同じくGグループだった奈良原生織さんの名前もあり、興奮したのだが、今日なかむらさんの受賞を知りまた興奮した。なかむらさんにお会いしたことはないのだけれどBFC2の最中からTwitterで何度かやり取りさせてもらっている。Gグループのきさめさんや如実さんとも会って話をしたことがあって楽しかった思い出がある。なかむらさんともいつかお会いできたらいいなと思う。なかむらさん、受賞おめでとうございます。

    あと『読書のおとも』つながりでいうと奈良原さんだけじゃなく海乃凧さんも最終候補に残っていた。凧さんは最近日記を書いているみたいで、読んだらやっぱり面白い。文章でぐんぐん読ませるところは、滝口悠生を思わせるところもある。文学フリマ後の『読書のおとも』のオンライン打ち上げで、凧さんの長い息遣いのスピードに乗った文章は柿内正午さんと類似してるところがあるみたいな話になったけど、柿内さんみたいにぐんぐん読める日記にふさわしい文章という気がするのでどんどん書いていつか本になってほしい。

     そういえばこの打ち上げを思い出すとTwitterのイメージとじっさい会った本人のイメージがちがうという話も思い出される。柿内さんがわたしを文学青年みたいな硬い印象を持ってたけど会ってみたらじっさいはスポーツマンタイプだった、みたいな。そのなかで二見さわや歌さんが文学フリマにきた柿内さんの格好がカラフルでカッコいい感じで思ってた印象とちがったらしく、鞄持った通勤中の会社員みたいなのが来ると思ってたという話に笑ったし、いま思い出しても笑える。

    先ほどTwitterPippoさんがわたしの絵にコメントをつけてくれていてうれしかったし、ありがたかった。
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夏の空は刻々と姿を変える。その姿を紙のうえに定着させたい。